辺将に宴す
2019.10.04
一曲涼州金石清
辺風蕭颯動江城
坐中有老沙場客
横笛休吹塞上声
唐の張喬(ちょうきょう、生没年不明)の「辺将(へんしょう)に宴す」。辺将は辺境を守る将軍。宴は宴会。
■読みと解釈
一曲涼州金石清
一曲の涼州(りょうしゅう)は金石(きんせき)清く
[涼州の曲を演奏する打楽器は清く悲しげで]
辺風蕭颯動江城
辺風(へんぷう)は蕭颯(しょうさつ)として江城を動かす
[辺境に吹く風はもの寂しく川近くの街を揺り動かす]
坐中有老沙場客
坐中(ざちゅう)には沙場(さじょう)に老いたる客有れば
[一座の中には古里を離れ砂漠で老いた兵士がいるので]
横笛休吹塞上声
横笛(おうてき)は塞上(さいじょう)の声を吹くを休(や)めよ
[横笛で国境付近の曲を吹くのは止めてくれ]
■注目点
宴席の情景に注目。辺境を守る将軍の宴席に涼州曲が流れている。涼州は西方の甘粛省の地で、その曲調は清く透き通って悲しげ。辺境近くには街があり川もあり、風が吹くともの寂しく激しく、不動の街や川を揺り動かす。揺り動かすのは風ではなく、清く透き通って悲しげな曲調かも知れない。
辺境を守る将軍の宴席には望郷が忍び寄る老兵士もいる。涼州の曲を吹くのは止めてくれ。清く透き通って聞こえる曲は聞くに堪えない。
宴席には酒もあろう。酔いが回りいい気分になっても、老兵士は戦場にいることが頭から離れない。早く古里に帰りたい。
作者が老兵士に代わり、胸中を詠んだ詩。
《PN・帰鳥》