山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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西施の石

2020.01.10

西施昔日浣紗津

石上青苔思殺人

一去姑蘇不復返

岸傍桃李為誰春

 

唐の楼穎(ろうえい、生没年不明)の「西施(せいし)の石」。西施は春秋時代の越の美女。石は西施が岸辺で薄絹を洗っていた石。

 

■読みと解釈

西施昔日浣紗津

西施が昔の日に紗(きぬ)を浣(あら)いし津(つ)

[西施が呉に行く昔のこと薄絹を洗っていた岸があり]

 

石上青苔思殺人

石の上の青き苔(こけ)は人を思殺(しさつ)す

[その石の上に生えている青い苔は私をひどく思いに沈ませる]

 

一去姑蘇不復返

一たび姑蘇(こそ)に去りて復(ま)た返らず

[西施はいったん呉の姑蘇に行ってしまうとついに返って来ず]

 

岸傍桃李為誰春

岸の傍(そば)の桃と李は誰(た)が為に春なる

[薄絹を洗っていた岸辺の桃や李の花はいったい誰の為に春を謳歌しているのか]

 

 

■注目点

構成、表現に注目。起句は西施がまだ越にいた昔を、承句は越にいない今を、西施の石に焦点を当て詠む。この2句は西施の美しさ。津の爽やかさ。紗の艶やかさ。石の硬さ。苔の侘しさ。題材に多様な感情を込める。一語でいえば思殺す感情。転句は呉の姑蘇に行き帰って来ぬ西施を、結句は津に春を謳歌し咲く桃李を詠む。この2句は西施のいない今、美女西施に匹敵する桃李は誰の為に春を謳歌するのか。作者は桃李の無情を責める。春は花開く時期。若い時期。楽しい時期。男女情愛の時期。西施のいない今、その春を謳歌する桃李を責める。「西施の石」。想像を膨らませる題。

 

《PN・帰鳥》