竹林寺に題す
2017.03.10
歳月人間促
煙霞此地多
殷勤竹林寺
更得幾回過
七八〇年頃の朱放(しゅほう)の「竹林寺に題す」。竹林寺は複数あり、特定し難い。題すは壁に書きつける。
■読みと解釈
歳月人間促
歳月は人間(じんかん)に促(せま)り
[時の流れは人の世に押し迫り]
煙霞此地多
煙霞(えんか)は此(こ)の地に多し
[朝焼け夕焼けはここには一杯]
殷勤竹林寺
竹林寺に殷勤(いんぎん)せん
[竹林寺に心をこめ念を入れたい]
更得幾回過
更に幾回(いくかい)か過(よ)ぎるを得ん
[以後何度も立ち寄ることはできぬ]
■注目点
竹林寺に対する朱放の思いに注目。
朱放は竹林寺の壁に何を書きつけたのか。ひと言で言えば信心。
初めの2句は竹林寺の時間。寺と言えば死者を弔う所。時の流れは、お構いなく、容赦なく押し寄せ、人を死に追いやる。だが竹林寺には一瞬の光明がある。それは朝焼けと夕焼け。いかにも仏教らしい。
終わりの2句は竹林寺の信心。お構いなく、容赦なく、竹林寺に押し寄せる時の流れ。何度も立ち寄ることはできぬが、立ち寄り、信心を深めたい。
食い止めることのできぬ時の流れ。そんな中で人間は生きている。朝焼け、夕焼けの光明は、心休まり幻想的。
この光明を何度も見ることはできぬ。竹林寺に殷勤せねばならぬ。殷勤が本詩の中心語。
《PN・帰鳥》