秋の思い
2014.09.19
洛陽城裏見秋風
欲作家書意万重
忽恐匆匆説不尽
行人臨発又開封
七六八年生まれの張籍(ちょうせき)の「秋の思い」。
■読みと解釈
洛陽城裏見秋風
洛陽(らくよう)の城の裏(うち)に秋風を見る
[洛陽の街中には秋の風が吹いているのが見える]
欲作家書意万重
家書(かしょ)を作らんと欲すれば意は万重(ばんちょう)
[家族への手紙を書こうとすると思いが万も重なり尽きない]
忽恐匆匆説不尽
忽(たちま)ち恐る匆匆(そうそう)にして説きて尽(つ)くさざるを
[にわかに心配なのはあわただしく書いたので言い尽くしていないこと]
行人臨発又開封
行人(こうじん)は発(た)つに臨み又封を開く
[旅の者が出発する時になって何度も封を開き読み返した]
■注目点
題の「秋の思い」の中身に注目。
作者は今、洛陽にいる。街中には秋風が吹いている。風は肌で感じるものだが、見えると言う。さすが詩人。
秋風が見える作者は、里心が起こる。家族に向け手紙を書く。何日ぶり、何か月ぶり。思いは尽きない。書いては消し、消しては書く。でも思いは尽きない。
書いた手紙を家族へ届けてくれる旅の者が出発する。でも心は残る。封をした手紙を開く。書き加える。今は秋。秋風が吹いている。
旅の者が出発してもなお、いつまでも心は残る。秋の思い、家族への思いは尽きない。
《PN・帰鳥》