山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

楊柳を折る

2019.11.08

枝枝交影鎖長門

嫩色曾霑雨露恩

鳳輦不来春欲尽

空留鴬語到黄昏

 

八〇三年頃生まれの段成式(だんせいしき)の「楊柳(ようりゅう)を折る」。楊も柳もやなぎ。楊柳を折って旅行く人に贈り、送別と再会を祈る。

 

■読みと解釈

枝枝交影鎖長門

枝枝(しし)は影を交えて長門(ちょうもん)を鎖(とざ)し

[楊柳の多くの枝枝は重なり合い影を交差させて暗く長門宮を閉ざし]

 

嫩色曾霑雨露恩

嫩色(どんしょく)は曾(かつ)て雨露(うろ)の恩に霑(うるお)えり

[若々しい楊柳の色は昔は雨や露の恵みを受け潤っていた]

 

鳳輦不来春欲尽

鳳輦(ほうれん)は来たらずして春は尽(つ)きんと欲し

[しかし天子の御車はもはや長門宮を訪れることもなく春も終わろうとしており]

 

空留鴬語到黄昏

空(むな)しく鴬語(おうご)を留(とど)めて黄昏(こうこん)に到らん

[ただ辺りにはいたずらに鴬の囀りだけを残して今日も日暮れの時刻になろうとしている]

 

 

■注目点

表現法に注目。長門宮は漢の武帝の寵愛を失った皇后が幽閉された宮殿。

「楊柳を折る」詩は送別と再会を詠む詩で、本詩は幽閉された皇后が、送別した武帝に再会したい思いを作者が代わって詠む。その思いを間接表現と直接表現で詠む。

楊柳の枝枝は幽閉された皇后。嫩色は若い皇后。雨露の恩は武帝の恵み。鴬語は皇后の嘆き。これらは間接表現。影を交える。来たらず。春尽きんと欲す。空しく留めて。黄昏に到らん。これらは直接表現。

 

《PN・帰鳥》