楊侍御に寄す
2019.11.01
一官何幸得同時
十載無媒独見遺
今日莫論腰下組
請君看取鬢辺絲
唐の包何(ほうか、生没年不明)の「楊侍御(ようじぎょ)に寄す」。楊は姓。侍御は天子側近の役人。
■読みと解釈
一官何幸得同時
一官(いっかん)は何ぞ幸いなる 時を同じくせしを得たるは
[小役人の私は何と幸せだったこと 貴君と一緒に天子に仕えることができたのは]
十載無媒独見遺
十載も媒(なかだち)無くして独り遺(のこ)さる
[だが十年間私には仲介者はなく出世できず独り取り残されている]
今日莫論腰下組
今日(こんにち)は腰下(ようか)の組(そ)を論ずる莫(な)きも
[この期に及んで腰に下げる印綬についてはとやかく言わないが]
請君看取鬢辺絲
君が鬢(びん)の辺りの絲を看取せんことを請(こ)う
[どうか貴君は私の鬢の辺りの白髪をじっくり見て仲介者となり老い先短い私を出世させて欲しい]
■注目点
作者の訴えに注目。作者は自分の職歴を振り返る。楊氏と共に天子に仕えたことがある。幸せだった。それは十年前のこと。今は仕えることができず、独り取り残されている。だが貴君は今なお天子に仕えている。不遇をかこっている自分が寂しく、楊氏が羨ましくて仕方ない。
腰に下げる印綬は金、銀、銅どれでもいい。自分は白髪になり、もはや老い先短い身。貴君が仲介者となり、十年前と同じように出世させて欲しい。楊氏よ、頼む。天子の側近になりたい。痛切な思いを訴える作者。
《PN・帰鳥》