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杜十四の江南に之くを送る

2019.12.20

荊呉相接水為郷

君去春江正淼茫

日暮孤舟何処泊

天涯一望断人腸

 

六八九年生まれの孟浩然(もうこうねん)の「杜十四(とじゅうし)の江南に之(ゆ)くを送る」。杜は姓。十四は一族同世代の十四番目。江南は長江の南。

 

■読みと解釈

荊呉相接水為郷

荊(けい)と呉(ご)は相い接して水を郷と為(な)す

[私の居る荊と君の行く呉とは互いに接して水郷地帯となり]

 

君去春江正淼茫

君の去るときは春の江は正(まさ)に淼茫(びょうぼう)たり

[君がここを離れる時は春の長江の水はまさしく広々と果てしない]

 

日暮孤舟何処泊

日暮るれば孤舟(こしゅう)は何(いず)れの処にか泊まる

[日が沈む頃に君の乗った一艘の小舟はどこに停泊するのか]

 

天涯一望断人腸

天涯をば一望すれば人の腸(はらわた)を断つ

[君の居る天の果てを眺めていると私の腸は断ち切られてしまう]

 

 

■注目点

見送る作者の思いに注目。杜十四の行く先は呉。見送る作者の居所は荊。遠く遠くへ行くのではない。水郷地帯で繋がっている。水、江、舟という水に関する語を起句、承句、転句に配し、水の不安定さを結句の腸を断つ、という詩情に結びつける。転句の日暮るればからすると、杜十四の呉への出発は早く、日が暮れるまで舟旅をしたことになる。これを受けて天涯と表現する。

停泊する当てもない杜十四の舟旅。その旅を断腸の思いで痛み悲しむ作者。腸は精神の宿る所。精神を断ち切るのだから、人が人でなくなる。死者となる。

 

《PN・帰鳥》