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朝より退き終南山を望む

2020.02.07

紫宸朝罷綴鵷鸞

丹鳳楼前駐馬看

唯有終南山色在

晴明依旧満長安

 

唐の李拯(りじょう、生没年不明)の「朝(ちょう)より退き終南山(しゅうなんざん)を望む」。朝は朝廷。終南山は首都長安南方の高峰。

 

■読みと解釈

紫宸朝罷綴鵷鸞

紫宸(ししん)の朝は罷(や)みて鵷鸞(えんらん)は綴(つらな)り

[御殿の朝政が終わり高級官が整然と居並び]

 

丹鳳楼前駐馬看

丹鳳(たんほう)の楼の前に馬を駐(とど)めて看る

[御殿の高殿の門前で馬に乗って立ち止まりじっと見つめる]

 

唯有終南山色在

唯(た)だ終南山の色のみ在る有りて

[ただ終南山の気配だけが存在しており]

 

晴明依旧満長安

晴明(せいめい)は旧(きゅう)に依りて長安に満てり

[空がからりと晴れた今も昔と変わらず長安に満ち溢れている]

 

 

■注目点

本詩の巧みさに注目。この詩は賊軍により混乱した政治を嘆き、朝廷から退出して終南山を眺めた詩とか。嘆き眺めた主語は高級官。

賊軍で政治が混乱したのは過去。朝廷から退出し、終南山を眺めているのは現在。過去と現在は大きく変わっているが、空がからりと晴れた気配は、過去も現在も変わらず、終南山にも長安にも満ち溢れている。李拯は過去の混乱を悲しみ痛むが、その思いを「色」という語に託し巧みに表現する。「色」とは気配。気配は言葉では説明し難い。説明し難い「色」が終南山に存在している。「色」が肝要語。

 

《PN・帰鳥》