春の雪
2018.08.24
飛雪帯春風
裴回乱繞空
君看似花処
偏在洛陽東
生没年不詳の唐の劉方平(りゅうほうへい)の「春の雪」。
■読みと解釈
飛雪帯春風
飛ぶ雪は春の風を帯(お)び
[吹雪が春の風をはらみ]
裴回乱繞空
裴回(はいかい)し乱れて空を繞(めぐ)る
[さ迷い乱れて空一杯に広がっている]
君看似花処
君看(み)よ 花に似たる処(ところ)は
[よく見るがいい 花吹雪の所は]
偏在洛陽東
偏(ひと)えに洛陽(らくよう)の東に在るを
[専ら洛陽の東に在るだけだ]
■注目点
題材・主題に注目。
起承転結の題材に注目すると、起句と承句は花吹雪と春風が題材で、春風で花吹雪を詠む。転句では題材として花を持ち出し、花吹雪を詠む。不即不離の転句。結句の題材は副都洛陽を持ち出し、洛陽は花吹雪の名所であると詠み、全体を締めくくる。起承転結の題材選びは巧みである。
副都洛陽。そこは花吹雪の名所。美しく華やかな花吹雪を見ていると、本格的な春到来を待望するとともに、人生の無常に思いを致す。唐の詩には「洛陽の女たちは花吹雪に嘆息し、容貌の衰えをいとおしむ」とある。花吹雪。それは美しくもあるが、寂しくもある。不安定な人の情を言い得ている。本詩の主題はここにあるのでは。
《PN・帰鳥》