婕妤の春の怨み
2018.05.25
花枝出建章
鳳管発昭陽
借問承恩者
双蛾幾許長
七一四年生まれの皇甫冉(こうほぜん)の「婕妤(しょうよ)の春の怨み」。婕妤は女官の名。姓は班。
■読みと解釈
花枝出建章
花の枝は建章(けんしょう)より出で
[花の枝は天子のいます建章宮から出て]
鳳管発昭陽
鳳(ほう)の管(ふえ)は昭陽(しょうよう)より発す
[鳳の笛は女官のいる昭陽殿から起こる]
借問承恩者
借問(しゃもん)す恩を承(う)くる者
[ちょっと聞くが恩愛を受けた貴女は]
双蛾幾許長
双蛾(そうが)は幾許(いくばく)か長き
[左右の眉毛がどれほど長かったの]
■注目点
何を怨むのかに注目。
建章は漢代の成帝が築いた宮殿で、成帝はここで班婕妤を寵愛した。昭陽は成帝が築いた女官専用の建物で、成帝はここで班婕妤ではなく、趙飛燕(ちょうひえん)という女性を寵愛した。
班婕妤が寵愛される建章宮からは、満開の花をつけた春の枝が香っている。満開の花の枝は班婕妤のこと。趙飛燕が寵愛される昭陽殿からは、瑞鳥の鳳の笛の音が響き亙る。鳳の笛の音は趙飛燕のこと。
ちょっと聞くがとは、班婕妤が趙飛燕に問うのです。問うたことは「私に代わって寵愛された貴女の眉毛はどれほど長かったの」。眉毛が長い。それは美人の条件。この問いが班婕妤の怨みなのです。怨む相手は趙飛燕。女官たちの葛藤です。
《PN・帰鳥》