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夜に袁江を発して李潁川と劉侍郎に寄す

2019.10.25

半夜囘舟入楚郷

月明山水共蒼蒼

孤猿更叫秋風裏

不是愁人亦断腸

 

七三二年生まれの戴叔倫(たいしゅくりん)の「夜に袁江(えんこう)を発して李潁川(りえいせん)と劉侍郎(りゅうじろう)に寄す」。袁江は江西省の川。李潁川の李は姓、潁川は安徽省の川。劉侍郎の劉は姓、侍郎は次官。

 

■読みと解釈

半夜囘舟入楚郷

半夜に舟を囘(めぐ)らし楚郷(そきょう)に入らんとするに

[夜中に小舟の向きを変え楚の土地へ入ろうとすると]

 

月明山水共蒼蒼

月は明らかにして山も水も共に蒼蒼(そうそう)たり

[月は明るく澄み山も川もみな青々として果てしなく続いている]

 

孤猿更叫秋風裏

孤猿(こえん)は秋風の裏(うち)に更に叫ぶ

[群れから離れた猿が何度も何度も秋の風の中で鳴き叫び]

 

不是愁人亦断腸

是(こ)れ愁人ならざるも亦(ま)た腸を断たん

[叫び声を聞くと愁いを持った人でなくても腸を断ち切られる]

 

 

■注目点

猿の鳴き声に注目。作者は小舟の向きを変えて西の楚の地に入ろうとすると、月と山が目に入る。月は明るく輝き、山と水は果てしなく清く澄み、青々している。天空の月も、地上の水も、中間の山も、明るく澄み切った景。

楚と言えば猿。猿は楚の西端の三峡の名物。鳴き声は聞く人の腸を千切る。愁いを持たぬ人の腸まで千切る。腸が千切れるのは作者だけではなく、李も劉もだろう。李は潁川におり、劉は次官だが、二人も猿の鳴き声を聞くと腸が千切れる。作者はそう想像する。

 

《PN・帰鳥》