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塞下の曲

2019.12.26

寒塞無因見落梅

胡人吹入笛声来

労労亭上春応度

夜夜城南戦未囘

 

唐の釈皎然(しゃくこうねん、生没年不明)の「塞下(さいか)の曲」。塞下は国境付近。

 

■読みと解釈

寒塞無因見落梅

寒き塞(とりで)にては落梅を見るに因(よし)無きも

[寒い国境付近では落ちる梅の花を見る因子は無いが]

 

胡人吹入笛声来

胡人(こじん)は吹きて笛の声に入れて来たる

[外敵が吹く笛の曲の調べに乗せて曲の調べが届いた]

 

労労亭上春応度

労労亭(ろうろうてい)の上(ほとり)に春応(まさ)に度(わた)るべくも

[故郷の労労亭には春がやって来ているに違いないが]

 

夜夜城南戦未囘

夜夜城(よよじょう)の南に戦いて未だ囘(かえ)らず

[夜夜城の南で戦っている私は労労亭に戻ることができない]

 

 

■注目点

掛け言葉に注目。「落ちる梅の花の因子は無い」とは、梅の花が咲く因子が無いので、梅の花は咲かない。だから落ちることも無い。梅の花が咲かないほど寒い。こんな所が戦場。兵士は堪ったものではない。

外敵が笛を吹く。笛の曲名は「落ちる梅の花」。落梅花。落梅花は別離を痛み郷愁を誘う曲。落ちる梅の花を見る因子は無い国境付近では春の到来は判らぬが、落梅花の曲を聞くことで春の到来を知ることができる。何とも寂しい限りである。

落梅に曲の落梅花を、城南戦に曲の戦城南を、夜夜と城を掛け合わせて城の名とする表現は巧みであり、辺塞詩を僧侶の釈皎然が作ったのも興味深い。

 

《PN・帰鳥》