偶成
2014.02.21
少年易老学難成
一寸光陰不可軽
未覚池塘春草夢
階前梧葉已秋声
一一三〇年生まれの朱熹(しゅき)の「偶成(ぐうせい)」。偶然に出来上がる。
■読みと解釈
少年易老学難成
少年老い易(やす)く学成り難(がた)し
[若者は年を取りやすく学問は成就しがたい]
一寸光陰不可軽
一寸の光陰(こういん)軽んずべからず
[わずかの時間もおろそかにしてはならぬ]
未覚池塘春草夢
未(いま)だ覚(さ)めず池塘(ちとう)春草の夢
[まだ池の土手に生えた(楽しい)春の草の夢は覚めぬのに]
階前梧葉已秋声
階前の梧葉(ごよう)已(すで)に秋声
[階段の前の梧(きり)の葉はもはや(悲しい)秋の音がする]
■注目点
前二句と後二句とのつながりに注目。
時が経つのは早い。この点でつながる。
時が経つのは早い。だからすぐに年を取る。だから学問が成就しない。時間を大事にし、年を取る前に、学問を身につけるよう、叱咤激励する。これが前句。
時が経つのは早い。楽しい春の草の夢が覚めないのに、悲しい秋の梧の葉がとっくに散り落ちる。時はあっと言う間。これが後句。
前二句も後二句も、時の経つのは早いことを言うが、前句は直接的にずばり言い、後句は間接的に遠回しに言う。直接と間接。ここに詩作りの巧みさがあるようです。
なお、この詩の作者は朱熹ではなく、室町時代の禅僧ではないか、と言う説がある。
《PN・帰鳥》