山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

龍起寺に宿る

2016.11.11

香刹夜忘帰

松清古殿扉

燈明方丈室

珠繋比丘衣

白日伝心浄

青蓮喩法微

天花落不尽

処処鳥啣飛

 

六九二年生まれの綦毋潜(きぶせん)の「龍起寺(りょうこうじ)に宿る」。龍起寺は湖北省にある寺。

 

■読みと解釈

香刹夜忘帰

香刹(こうさつ)にて夜なるも帰るを忘れ

[龍起寺に来て夜になっても家に帰るのを忘れ]

 

松清古殿扉

松は古殿(こでん)の扉に清らかなり

[松は古い本殿の扉に映り清々しい]

 

燈明方丈室

燈(ともしび)は方丈の室に明らかにして

[常燈は修行部屋に明るく輝き]

 

珠繋比丘衣

珠(たま)は比丘(びく)の衣に繋(か)けり

[珠数は僧侶の衣服に繋けている]

 

白日伝心浄

白日なる伝心は浄(きよ)く

[白い日の太陽なる以心伝心は清浄であり]

 

青蓮喩法微

青蓮(せいれん)なる喩法(ゆほう)は微なり

[青い蓮の芳香なる仏法説諭は微妙である]

 

天花落不尽

天花(てんげ)は落ち尽くさずして

[天の花はすっかり散り切らず]

 

処処鳥啣飛

処処に鳥は啣(ふく)みて飛ぶ

[至る所で鳥が銜えて飛んでいる]

 

 

■注目点

龍起寺を詠む用語に注目。

用語として注目すべきは、仏教語の多用であろう。香刹、燈明、方丈、珠数、比丘、伝心、青蓮、天花、鳥啣。これらは仏教語。寺を詠むのだから、仏教語の使用は当然と言えば当然だが、何と多いことか。

香刹に来て帰るのを忘れ、この寺に宿泊することになった作者。夜の香刹を観察し詠む。

この香刹は歴史ある寺か。古い本殿。扉には常緑樹の松の反映。方丈の部屋に輝く燈明。比丘の衣服にかけた珠数。香刹の方丈と比丘。

白日のごとき清浄なる以心伝心。青蓮のごとき微妙なる仏教説諭。緻密な比丘の修行。

天花を散らすのは天女。天女が天花を散らし切る前に、浄土の鳥が天花を銜え、至る所で飛び交っている。

香刹の静寂。比丘の修行。

 

《PN・帰鳥》