山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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高殿で別れる人を見送る

2016.05.13

労歌一曲解行舟
紅葉青山水急流
日暮酒醒人已遠
満天風雨下西楼

 

七九一年生まれの許渾(きょこん)の「高殿で別れる人を見送る」。

 

■読みと解釈
労歌一曲解行舟
労歌(ろうか)一曲すれば行く舟を解き
[送別の歌を一曲歌うと別れ行く舟は岸辺を離れ]

 

紅葉青山水急流
紅葉 青山 水は急流なり
[赤くなった葉に青々茂る山それに水の流れは速い]

 

日暮酒醒人已遠
日暮れ酒醒(さ)むれば人は已(すで)に遠く
[日が暮れ酒の酔いが醒めると友はすでに遠く去り]

 

満天風雨下西楼
満天の風雨に西楼(せいろう)より下る
[空一面は風や雨で荒れ西の高殿から降りる]

 

■注目点
前半2句と後半2句の描写の違いに注目。
前半2句は別れる時の描写。後半2句は別れた後の描写。
前半2句は晴天の明るい景を、聴覚と視覚で描写する。後半の2句は雨天の暗い景を、静と動で描写する。

別れ行く友に焦点を当てると、前半は行く舟を解くと言い、友の姿は見えるが、後半は人は已に遠くと言い、友の姿は見えぬと描写する。高殿付近の景に焦点を当てると、前半は色彩で穏やかな景を、後半は風や雨で荒れた景を描写する。
前半と後半の景の違い。それは情の違いではあるまいか。前半は寂しく悲しい情を敢えて抑えている。後半は寂しく悲しい情を抑えず、吐き出している。そんな違いでは。

 

《PN・帰鳥》