山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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香積寺に立ち寄る

2016.07.01

不知香積寺
数里入雲峯
古木無人逕
深山何処鐘
泉声咽危石
日色冷青松
薄暮空潭曲
安禅制毒龍

 

七五九年没の王維(おうい)の「香積寺(こうしゃくじ)に立ち寄る」。香積寺は首都長安郊外の寺。

 

■読みと解釈
不知香積寺
香積寺を知らず
[香積寺はどこに在るのか知らぬ]

 

数里入雲峯
数里の雲峯に入れり
[数里彼方の雲のかかる峯に分け入った]

 

古木無人逕
古木にして人逕無く
[古い木ばかりで人の通る小道はなく]

 

深山何処鐘
深山には何れの処の鐘ぞ
[深い深い山にはどこかの鐘の音がする]

 

泉声咽危石
泉声は危石(きせき)に咽(むせ)び
[谷川の音は切り立つ岩に当たって咽び泣き]

 

日色冷青松
日色(にっしょく)は青松に冷ややかなり
[日光は青々した松に冷ややかに射している]

 

薄暮空潭曲
薄暮に空潭(くうたん)の曲(くま)
[日暮れどき誰もいない水ぎわの傍で]

 

安禅制毒龍
安禅(あんぜん)は毒龍(どくりょう)を制す
[瞑想する禅僧が煩悩を鎮めている]

 

■注目点
香積寺に立ち寄る王維の心境に注目。
香積寺。名は聞いたことがあるが、行ったことはない。香積寺の場所を知らぬ王維。峯に入って行く。行けども行けども見えぬ。峯には雲がかかり、高く高く登った。未知の香積寺。

人が歩いた気配はない。あるのは古い古い木ばかり。深い深い山。どこからか、鐘の音が聞こえる。それは梵鐘。ゴーンゴーン。暫く立ち止まり、耳を傾ける。

鐘の音と共に谷川の水音。ザブリザブリ。切り立つ岩にぶつかり、咽び泣いている。まさに人の咽び泣き。
日光は青々した松に射しているが、ひやりとする冷たさ。これも深い深い山のせいか。
峯に入って何時間か経過。日が暮れ、人気のない水ぎわの傍に、誰かいる。それは僧。座禅を組み、心身を安らかにし、心中の煩悩を鎮めている。毒龍とは人を害する龍で、煩悩、雑念に譬える。
禅僧に会い、安堵する王維。
《PN・帰鳥》