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韋処士の郊居

2018.06.01

満庭詩境飄紅葉

繞砌琴声滴暗泉

門外晩晴秋色老

万条寒玉一渓煙

 

生没年不詳の唐の雍陶(ようとう)の「韋処士(いしょし)の郊居(こうきょ)」。韋は姓。処士は隠者。郊居は田舎住まい。

 

■読みと解釈

満庭詩境飄紅葉

庭に満つる詩境(しきょう)は紅葉を飄(ひるがえ)し

[庭一杯の詩情はひらひら舞い上がる紅葉]

 

繞砌琴声滴暗泉

砌(みぎり)を繞(めぐ)る琴の声は暗泉(あんせん)を滴(したた)らす

[石畳を囲む琴の音は垂れ落ちる湧き水]

 

門外晩晴秋色老

門外は晩晴(ばんせい)にして秋色は老ゆ

[門の外は夕晴れで衰えゆく秋の気配]

 

万条寒玉一渓煙

万条(ばんじょう)の寒玉(かんぎょく)に一渓(いっけい)の煙(もや)

[万もの緑の竹の枝とひと筋の谷川には靄]

 

 

■注目点

表現技巧に注目。

韋隠者の田舎住まいを門の内と門の外に分けて詠む。内は紅葉で視覚的に、琴声と暗泉で聴覚的に詠む。外は晩晴で触覚的に、寒玉で触覚的に、一渓で聴覚的に詠む。五感を駆使し、韋隠者の田舎住まいを平面的かつ立体的に詠む。

琴と言えば隠者の楽器。例えば陶淵明(とうえんめい)は飾らぬ琴を酒席で弾くと、音色が出ずも、琴の中にこそ趣があると言う。

竹と言えば竹林の七賢。阮籍(げんせき)ら七人の隠者が世俗を離れ、自由を謳歌したのが竹林である。

隠者を髣髴させる琴と竹。内に琴を、外に竹を、何げなく使う。

 

《PN・帰鳥》