山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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鞏の路にて懐いに感ず

2014.11.21

馬嘶白日暮

剣鳴秋気来

我心渺無際

河上空徘徊

 

七七二年生まれの呂温(りょおん)の「鞏(きょう)の路にて懐(おも)いに感ず」。鞏は河南省の地。洛陽付近。懐いに感ずとは心が動く。

 

■読みと解釈

馬嘶白日暮

馬は嘶(いなな)き白日は暮れ

[軍馬は声を高くして嘶き太陽は西に沈み]

 

剣鳴秋気来

剣(けん)は鳴き秋気は来たる

[軍刀は音をたてて鳴り秋の気配がやって来る]

 

我心渺無際

我が心は渺(びょう)として際(かぎ)り無く

[私の心は限りなく広がってつかみどころがなく]

 

河上空徘徊

河の上(ほとり)空(むな)しく徘徊(はいかい)す

[河のほとりを満たされぬ思いのままさ迷い歩く]

 

 

■注目点

鞏を歩く呂温の心中に注目。

呂温はいま鞏の地にいる。鞏の地は戦場ではない。戦場ではない鞏の地で、軍馬と軍刀を詠む。鞏の地を歩いていると、ふと人間同士が戦い合う戦場が思い浮かび、その思いに心動かされ、詠んだのがこの詩であろう。

呂温が心動かされた戦場。季節、時刻は秋の夕暮れ。もの寂しい景です。馬はどんな思いで嘶き、剣はどんな思いで音をたてている。

戦場に思いを馳せる呂温の心中。つかみどころがなく不安定。不安定な心を抱え、ただ独り河辺をさ迷い歩く。

 

《PN・帰鳥》