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静かに口ずさむ

2017.08.04

自従苦学空門法

銷尽平生種種心

唯有詩魔降未得

毎逢風月一間吟

 

七七二年生まれの白居易(はくきょい)の「静かに口ずさむ」。

 

■読みと解釈

自従苦学空門法

空門(くうもん)の法を苦学せし自従(よ)り

[仏教の教えを苦しみ熱心に学んでからは]

 

銷尽平生種種心

平生(へいぜい)の種種の心を銷(け)し尽(つ)くせり

[平生の多種多様な煩悩は抑え切った]

 

唯有詩魔降未得

唯(た)だ詩魔(しま)有りて降(くだ)すこと未だ得ず

[ただ詩魔だけは抑え切ることができず]

 

毎逢風月一間吟

風月に逢(あ)う毎(ごと)に一(いつ)に間吟(かんぎん)す

[風や月に出会うたびに専ら静かに口ずさむ]

 

 

■注目点

詩魔への思いに注目。

詩魔とは詩作の思いを起こさせる悪魔。

詩魔は煩悩の一つ。仏教の修行を積んでも、抑え切ることのできぬ詩魔。白居易は業だと考える。前世の悪行により、現世で受ける悪報だと考える。因果応報だと考える。業は何年修行しても、解脱することはできぬ。白居易はそう考える。

そうではあるが、この詩魔。心中に巣くっているが、邪魔物とは思わず、誇りに思っていたのではないか。詩魔ゆえに詩作を続けることができ、心中の思いを吐き出すことができる。詩作への執念。そう確信していたのではないか。

詩魔を静かに口ずさむ。白居易の心中は察して余りある。

 

《PN・帰鳥》