雪の降る中、紅橋に立ち寄る
2018.02.02
玲瓏玉樹冷棲鴉
多少紅楼隔水涯
一路画簾寒不巻
隔墻香出白梅花
一七七一年生まれの陳文述(ちんぶんじゅつ)の「雪の降る中、紅橋(こうきょう)に立ち寄る」。紅橋は江蘇省の景勝地にある橋。
■読みと解釈
玲瓏玉樹冷棲鴉
玲瓏(れいろう)たる玉樹(ぎょくじゅ)に棲鴉(せいあ)は冷ややかにして
[透き通る鮮やかな樹々に雪降り鴉の塒はひんやりし]
多少紅楼隔水涯
多少の紅楼(こうろう)は水涯(すいがい)を隔てり
[数知れぬ多くの紅色の楼閣が両岸に建ち並んでいる]
一路画簾寒不巻
一路の画簾(がれん)は寒くして巻かず
[道沿いの楼閣にずっと画いた絵簾は寒くて巻き上げぬまま]
隔墻香出白梅花
墻(かき)を隔てて香は白梅花(はくばいか)より出ず
[垣根の向こうから白梅の花の匂いが香ってくる]
■注目点
詩の組み立てに注目。
一句目。雪が降り寒い。樹も寒いし、鴉も寒い。人も寒い。
二句目。楼閣には化粧した美女たち。酒席で歌や舞をする女たち。
三句目。楼閣の簾は下げたまま。寒いから。美女たちの姿は見えぬ。
四句目。美女たちは見えぬが、美女たちを思わせる白梅の香が匂う。
色彩豊かな詩。雪の白。紅橋、紅楼の紅。玉樹の透明色。水の青。画簾の多色。寒の冷淡色。墻の一色。白梅花の白。種々様々な色を駆使し、紅橋にある紅楼、そして酒席を賑わす美女を詠む。
雪の降る中、美女と遊ぶためにやって来たが、思いが叶わぬ陳文述。無念。
《PN・帰鳥》