山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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開聖寺に題す

2018.06.22

宿雨初収草木濃

羣鴉飛散下堂鍾

長廊無事僧帰院

尽日門前独看松

 

生没年不詳の唐の李渉(りしょう)の「開聖寺(かいせいじ)に題す」。開聖寺に関しては不詳。題は壁に書きつける。

 

■読みと解釈

宿雨初収草木濃

宿雨(しゅくう)は初めて収まり草木は濃く

[昨夜来の雨はようやく止んで草木は青さを増し]

 

羣鴉飛散下堂鍾

羣鴉(ぐんあ)は堂より下(くだ)る鍾(かね)に飛び散る

[群れた鴉(からす)は修行が終わる鐘の音に合わせ本堂から下がる僧侶と共に飛び散る]

 

長廊無事僧帰院

長廊(ちょうろう)は事無くして僧は院に帰る

[長い廊下は何事もなく僧侶は静かに居室に帰る]

 

尽日門前独看松

尽日(じんじつ)門前にて独り松を看る

[一日中門前でただ独り松をじっと見つめる]

 

 

■注目点

松の効果に注目。

作者李渉が開聖寺の壁に書きつけたこと。それは開聖寺の現在の景と李渉の感慨。

開聖寺の現在の景は、仲春の雨上がり、雨で青さを増す草木、群れた鴉の飛び立ち、廊下伝いに居室に帰る僧侶など。これによって、静寂たる、粛然たる空間で、静寂たる、粛然たる人間が、精神統一して修行する、俗外の出家の世界。

作者李渉の感慨は、節操、長寿の松をじっと見つめる。開聖寺と一体となっている作者李渉。李渉も開聖寺で修行している僧侶の一人なのである。

 

《PN・帰鳥》