山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

長江沿いの高殿で昔の事を懐う

2015.08.14

独上江楼思渺然

月光如水水連天

同来望月人何処

風景依稀似去年

 

八五〇年頃の趙嘏(ちょうか)の「長江沿いの高殿で昔の事を懐う」。

 

■読みと解釈

独上江楼思渺然

独り江楼(こうろう)に上れば思いは渺然(びょうぜん)たり

[独りで長江沿いの高殿に上ると思いは果てしなく極まり]

 

月光如水水連天

月の光は水の如(ごと)く水は天に連なる

[月の光は水のように清らかでその水は天空に連なる]

 

同来望月人何処

同(とも)に来たりて月を望みし人は何(いず)れの処ぞ

[一緒に来て月の光を眺めたあの人は今どこにいる]

 

風景依稀似去年

風景は依稀(いき)として去年に似たるに

[風景は去年と変わらずそっくりそのままなのに]

 

 

■注目点

題の「昔の事」に注目。

「独り」と「同に」に注目。独りとは単独。同にとは複数。

長江沿いの高殿に上ったのは独り。それは作者の趙嘏。今のこと。同に月を眺めたのは趙嘏と誰か。それは去年のこと。

趙嘏は単独で高殿に上る。高い高い高殿。視界は開け、見晴らしは抜群。空には皓々と輝き、水に映る月の光。空と水が連なり一体。

去年と同じこの風景。この風景を一緒に眺めたあの人は今どこ。風景は同じなのに、あの人は傍にいない。

あの人とは誰。男?女?たぶらかす。想像は尽きない。これが「昔の事」。

 

《PN・帰鳥》