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鏡に照らして白髪を見る

2013.06.14

宿昔青雲志

蹉跎白髪年

誰知明鏡裏

形影自相憐

 

七四〇年に亡くなった張九齢(ちょうきゅうれい)の「鏡に照らして白髪を見る」。

 

■読みと解釈

宿昔青雲志

宿昔(しゅくせき)には青雲の志あるも

[昔は立身出世の志があったが]

 

蹉跎白髪年

蹉跎(さた)たり白髪の年

[志を得ぬまま老年になってしまった]

 

誰知明鏡裏

誰か知らん 明鏡の裏(うち)に

[誰にもわからぬ 曇りのない鏡の中で]

 

形影自相憐

形と影と自(みずか)ら相(あ)い憐れむとは

[私と鏡の中の私とが互いに気の毒がるとは]

 

 

■注目点

鏡に映る白髪を見て何を思うのか。ここに注目。

一句目は昔の私。二句目は今の私。

昔の私は志高く、立身出世を夢見ていたが、今の私は夢かなわず、白髪の老人になってしまった。昔と今を比べ思うのは、人生はままならぬこと。

三句目は今の私を鏡に映し、四句目はそれを見て、気の毒に思う。

気の毒なのは、鏡の前の私と、鏡に映る私とが見つめ合い、沈みこんでいること。二人の私を比べ思うのは、やはり人生ままならぬこと。

人生ままならぬことを、青雲の志と白髪の年とで対比し、それを明鏡と形影で実証する。やや凝った手法だが、多くの連中に共通する人生、それを技巧を凝らし表現する。ここにも注目。

 

《PN・帰鳥》