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鍾山の即事

2018.03.30

澗水無声繞竹流

竹西花草弄春柔

茅簷相対坐終日

一鳥不鳴山更幽

 

一〇二一年生まれの王安石(おうあんせき)の「鍾山(しょうざん)の即事」。鍾山は南京にある山。山近くには王安石の隠居部屋がある。即事は場に即して詠む。

 

■読みと解釈

澗水無声繞竹流

澗(たに)の水は声無く竹を繞(めぐ)りて流れ

[谷川の水は音もなく竹林をぐるりめぐって流れ]

 

竹西花草弄春柔

竹西の花草は春の柔らかさを弄(ろう)す

[竹林の西側の花や草は春のやわらかさを楽しんでいる]

 

茅簷相対坐終日

茅簷(ぼうえん)にて相い対し坐すること終日

[茅葺きの粗末な部屋で一日中鍾山に向き合う]

 

一鳥不鳴山更幽

一鳥も鳴(な)かずして山は更に幽(ゆう)なり

[鳥一羽鳴かず鍾山はいっそう暗く深く遠い]

 

 

■注目点

王安石の心境に注目。

王安石は隠居部屋から鍾山を眺める。隠居部屋近くには谷川、竹林がある。竹林と言えば、曾て世俗を避け遊んだ七賢。竹林の東ではなくなぜ西。西は日が沈み、浄土の方角。心が静まる方角。隠居部屋は茅葺き。粗末な小屋。小屋から鍾山に向き合う。山では鳥一羽鳴かぬ。

王安石は春のやわらかさを、幽なる鍾山がいっそう幽なのを、ほしいまま楽しんでいる。

柔と幽。柔はやわらかさ、やさしさを、幽は暗さ、深さを想像させる。

 

《PN・帰鳥》