山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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野原の池

2017.08.11

侵暁乗涼偶独来

不因魚躍見萍開

巻荷忽被微風触

瀉下清香露一杯

 

八四四年生まれの韓偓(かんあく)の「野原の池」。

 

■読みと解釈

侵暁乗涼偶独来

暁(あかつき)を侵(おか)し涼(りょう)に乗じて偶(たまた)ま独り来たる

[夜が明け清々しさにひかれたまたま独りでやって来た]

 

不因魚躍見萍開

魚の躍(おど)るに因(よ)らずして萍(ひょう)の開くを見る

[魚が躍り上がったせいではなく浮草が開いたのが見えた]

 

巻荷忽被微風触

巻荷(けんか)は忽(たちま)ち微風(びふう)に触れられ

[閉じていた荷(はす)の葉がにわかにそよ風に吹かれ]

 

瀉下清香露一杯

瀉(そそ)ぎ下(くだ)す 清香(せいこう)の露一杯を

[清らかな香りのする露を一気に流した]

 

 

■注目点

鍵になる語に注目。

この詩の季節は夏。時刻は早朝。場所は野原の池。この状況を詠む題材は、作者自身と萍(浮草)と荷(はす)。

三つの題材を動かす語は「独り」。「独り」が鍵。

「独り」朝早く起き、清涼な空気にひかれ、とぼとぼ野原へ。見ると池がある。池には萍が浮かんでいる。見ると萍が開いた。「独り」で開いた。池には荷もある。見ると荷も開いた。「独り」で清らかな香を流した。

「独り」で事を起こした作者自身、萍、荷を題材とし、静寂な夏の早朝を詠む。

「独り」は寂しくもあるが、強くもある。

 

《PN・帰鳥》