山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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酒を勧む

2013.05.17

勧君金屈巵
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離

 

八一〇年生まれの于武陵(うぶりょう)の「酒を勧む」。

 

■読みと解釈
勧君金屈巵
君に勧めん金屈巵(きんくつし)を
[君に黄金の把手のついた大杯を勧めよう]

 

満酌不須辞
満酌(まんしゃく)辞するを須(もち)いず
[あふれるほど注いだ酒を辞退するには及ばぬ]

 

花発多風雨
花発(ひら)けば風雨多し
[花がぱっと開くと風や雨で散ったり萎んだりする]

 

人生足別離
人生 別離足(た)る
[人の生涯にも別離は付き物で逃げられない]

 

 

■注目点
なぜ酒を勧めるのか。理由に注目。
花発けばから、季節は春。満開の花の下、くり広げる酒席。杯にあふれるほどの酒。杯は最高級の黄金製。酒も最高級だろう。
その杯、酒を酌み交わす二人。行ったり来たり。時の経つのを忘れて。明かりを点けて夜まで。楽しみは極まりない。
とはいえ必ず極まる時がくる。それが自然界の道理。盛りに咲く花にも、酒を楽しむ人間にも。盛者必衰というではないか。
花が散り萎むように、人間も散り萎む。生別、死別。別れは至る所にあり、別れから逃げることはできない。
ならば酒を飲み、今のこの時を楽しむ。でも楽しみは続かない。それが人生というもの。
ハナニアラシノタトヘモアルゾ/「サヨナラ」ダケガ人生ダ(井伏鱒二訳)

 

《PN・帰鳥》