山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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遠きを送る

2017.01.06

帯甲満天地

胡為君遠行

親朋尽一哭

鞍馬去孤城

草木歳月晩

関河霜雪清

別離已昨日

因見古人情

 

七一二年生まれの杜甫の「遠きを送る」。

 

■読みと解釈

帯甲満天地

帯甲(たいこう)は天地に満つるに

[武装兵が至る所でうようよしているのに]

 

胡為君遠行

胡為(なんす)れぞ君は遠く行くや

[君はどうして遠くへ行くのか]

 

親朋尽一哭

親朋は尽(ことごと)く一哭(いっこく)し

[親類も友人もみなひどく声をあげて泣き]

 

鞍馬去孤城

鞍馬(あんば)は孤城を去る

[君の乗った馬は寂しい街を出て行く]

 

草木歳月晩

草木と歳月は晩(く)れ

[草や木も枯れ年も暮れてしまい]

 

関河霜雪清

関河の霜雪(そうせつ)は清し

[関所の河の霜や雪は清く冷たい]

 

別離已昨日

別離は已(すで)に昨日なるに

[君との別れはもはや昨日のことだが]

 

因見古人情

因(よ)りて古人の情を見る

[その故に別れを悲しむ昔の人の情を見る思いがする]

 

 

■注目点

遠出する人を見送る杜甫の思いに注目。

遠出する人。その名も行き先も不明だが、見送った明くる日に詠んだ詩。季節は冬。

世間の状況。戦争状態。武装兵があちこちに。危険極まりない。なのに君は遠出する。なぜ遠出する。親類も友人も一斉に大声で泣いている。君の身の上を案じている。

君の乗った馬は行きたくないのに、鞭で叩かれ、親類や友人の泣く寂しい街をとぼとぼ出て行く。馬は君の身の上を案じている。

冬の状況。君が出て行く今、草木は枯れ、一年も暮れ、君が越えてゆく国境の河には、霜や雪が降り、清く寒いだろう。君の身の上が心配でならぬ。

別後の状況。君の遠出を心配し悲しみ、見送ったのは昨日だが、私と同じ思いをした昔の人を思い出す。

心配し悲しむことは、別れる当日は勿論だが、別れた以後も心配し悲しい。この思いは昔も今も変わらぬ。

遠出する君を引き留めたい。涙ながらに訴える杜甫。

 

《PN・帰鳥》