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西宮の秋の怨み

2019.05.17

芙蓉不及美人粧

水殿風来珠翠香

卻恨含情掩秋扇

空懸明月待君王

 

六九八年生まれの王昌齢(おうしょうれい)の「西宮(せいきゅう)の秋の怨み」。西宮は皇太后の居所で、漢の世の成帝の母と成帝の寵愛を失った班婕妤(はんしょうよ)が住んでいた。

 

■読みと解釈

芙蓉不及美人粧

芙蓉(ふよう)も美人の粧(よそおい)には及ばず

[芙蓉の花は化粧した美女には及ばない]

 

水殿風来珠翠香

水殿(すいでん)に風来たりて珠翠(しゅすい)は香ばし

[水辺の宮殿に風が吹き芙蓉の匂いが芳しい]

 

卻恨含情掩秋扇

卻(かえ)って恨むらくは情を含みて秋扇を掩(おお)い

[反対に恨めしいのは感情を隠し秋の扇で顔を掩い]

 

空懸明月待君王

空には明月を懸(か)け君王を待つを

[空に明月を懸け君王のお越しを待っていること]

 

 

■注目点

怨むと恨むに注目。

題には怨むを、詩には恨むを使っている。訓は共に「うらむ」だが、怨むは人をうらむ。恨むは自分をうらむ。

怨むと恨むの違いに注目すると、詩全体は人をうらむ内容とし、後の二句は人をうらむに加え、自分をうらむを加えた。

注目したいのは後の二句。この二句で班婕妤は自分をうらんでいる。自分の感情を押し殺し、捨てられた秋の扇で顔を隠し、空に懸かる明月に我が身を託し、成帝のお越しを待っている。こんな自分を班婕妤はどう思っている。想像したい。

 

《PN・帰鳥》