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薤の露

2015.05.08

薤上露何易晞

露晞明朝更復落

人死一去何時帰

 

無名氏「薤(にら)の露」。作者は無名氏。固有名詞は不明。薤に降りた露。紀元前の作。

 

■読みと解釈

薤上露何易晞

薤の上の露は何ぞ晞(かわ)き易(やす)き

[薤の葉に降りた露は何と消え易いことか]

 

露晞明朝更復落

露は晞けども明朝(みょうちょう)更に復(ま)た落つ

[露は消えても明日の朝またまた降りる]

 

人死一去何時帰

人死して一たび去らば何(いず)れの時にか帰らん

[人は一度この世から消えると何時帰って来れる]

 

 

■注目点

薤の露と人の死に注目。

薤は紫白色の小さな花が咲く多年生植物。露ははかない譬え。薤の葉の上に降りた露はすぐに消える。

この詩は挽歌(ばんか)。挽歌は柩(ひつぎ)を挽(ひ)く時に歌う埋葬歌。

言い伝えによると、一国の王だった田横(でんおう)は、家来になり服従するよう命ぜられるが、拒否し自殺する。多くの部下は田横の死を悼み、作ったのがこの挽歌とか。

薤の葉に降りた露は確かに消える。だが明日になれば、また現れる。次の朝も、また次の朝も現れる。

だが田横が消えたら、二度と現れることはない。家来となり服従するよう命ぜられた田横。拒否するのは理の当然。義を貫いての自殺。部下の悲痛は余りある。

この挽歌は田横の挽歌で収まらず、万人共通の挽歌。人は死んだら二度とは帰らぬのです。

 

《PN・帰鳥》