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蒿の里

2015.06.19

蒿里誰家地

聚斂魂魄無賢愚

鬼伯一何相催促

人命不得少踟蹰

 

無名氏「蒿(よもぎ)の里」。墓地を言う。作者は無名氏。固有名詞は不明。紀元前の作。

 

■読みと解釈

蒿里誰家地

蒿里は誰(た)が家の地ぞ

[蒿の村の墓地はどなたの土地]

 

聚斂魂魄無賢愚

魂魄(こんぱく)を聚斂(しゅうれん)して賢愚無し

[賢者愚者の別なく魂も魄も寄せ集めている]

 

鬼伯一何相催促

鬼伯(きはく)は一に何ぞ相い催促するや

[冥土の長が何とも一方的に急き立てる]

 

人命不得少踟蹰

人命は少(しばら)くも踟蹰(ちちゅ)するを得ず

[生きている人の命は一時もぶらぶらできぬ]

 

 

■注目点

「鬼伯」(冥土の長)に注目。

蒿は多年生植物。蓬に同じ。山野に自生し、香がある。

この詩は挽歌(ばんか)。挽歌は柩(ひつぎ)を挽(ひ)く時に歌う埋葬歌。

蒿の村は墓地。墓地には賢者、愚者の別なく、肉体も精神も、寄せ集めている。多くの人間が埋葬されている。

埋葬は人間の意志ではない。鬼伯なる冥土の長に急き立てられてのこと。冥土の長は生きている人間に有無を言わさず、一刻の猶予も許さず、速く早く冥土に来るよう、催促するのです。冥土の長が生きている人間を冥土に引きこむのです。

伝えによると、この蒿里は士大夫庶民の埋葬歌、薤露は王侯貴族の埋葬歌だとか。

 

《PN・帰鳥》