山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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苜蓿烽にて家の人に寄す

2019.04.12

苜蓿烽辺逢立春

葫蘆河上涙沾巾

閨中只是空相憶

不見沙場愁殺人

 

 七一五年生まれの岑参(しんじん)の「苜蓿烽(もくしゅくほう)にて家の人に寄す」。苜蓿烽は西域敦煌(とんこう)にある狼煙(のろし)台。家の人は妻。

 

読みと解釈

苜蓿烽辺逢立春

 苜蓿烽の辺(あた)りにて立春に逢(あ)い

[苜蓿烽辺りで春到来の立春にばったり会い]

 

葫蘆河上涙沾巾

 葫蘆河(ころか)の上(ほとり)にて涙は巾を沾(うるお)す

[葫蘆河辺りで手ぬぐいは涙でびっしょり]

 

閨中只是空相憶

 閨中(けいちゅう)にて只(た)だ是(こ)れ空しく相(あ)い憶(おも)うも

[お前は俺を憶うてもただただ空しいばかり]

 

不見沙場愁殺人

 沙場(さじょう)の人を愁殺(しゅうさつ)するを見ず

[砂漠が俺をひどく悲しんでいるのは見ていない]

 

 

注目点

 夫と妻の場所に注目。

 一、二句の場所は苜蓿烽、葫蘆河。ここに居るのは夫の岑参。三句の場所は閨中。ここに居るのは妻。四句の場所は沙場。ここに居るのは夫。

 夫は妻の場所から遠く離れた砂漠のある国外。妻は国内。

 夫は妻を思い泣く。暖かい春なのに、妻に会えぬ悔しさ。涙が溢れる。妻も夫を思いやるが、空しさばかり。砂漠が夫を悲しませる。ここへ来ぬと判るまい。夫は妻に感謝するが、夫の感謝は伝わるまい。

 戦場に居る夫の悩み。妻を愛しく思い、自分を辛く思う夫。読む者をして考えさせられる。

 

《PN・帰鳥》