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芳野

2013.04.05

古陵松柏吼天飆
山寺尋春春寂寥
眉雪老僧時輟帚
落花深処説南朝

 

一八〇七年生まれの藤井竹外(ちくがい)の「芳野」。芳野は吉野。奈良県の地名。

 

■読みと解釈
古陵松柏吼天飆
古陵(こりょう)の松柏は天飆(てんぴょう)に吼(ほ)え
[古い墓陵の側の松や柏はつむじ風に向かって大声をあげ]

 

山寺尋春春寂寥
山寺(さんじ)春を尋ぬれば春は寂寥(せきりょう)
[山寺に春を探しにやって来ると春はもの寂しくひっそりしている]

 

眉雪老僧時輟帚
眉雪(びせつ)の老僧は時に帚(は)くを輟(や)め
[眉が雪のように白い老いた僧が時おり帚くのを止め]

 

落花深処説南朝
落花深き処(ところ)南朝(なんちょう)を説く
[落ちた花びらをうず高く帚き集めた所で南朝の歴史を説いている]

 

 

■注目点
南朝が置かれた芳野をどう描写するか。ここに注目。
芳野を描写する題材は古陵、山寺、老僧、南朝の四つ。
南朝は京都の北朝に対して、芳野に開いた朝廷。各地を流転した後、芳野にたてこもったのが後醍醐(ごだいご)天皇。
古陵は一三三九年、芳野で没した後醍醐天皇の墓陵。
山寺は芳野山の如意輪寺(にょいりんじ)。
老僧は眉が雪のよう。高齢で物知りの僧が想像される。
歴史に精通した僧が、つむじ風が吹き、桜の花散る中で、南朝を説いているのです。

 

《PN・帰鳥》