山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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胡隠君を尋ぬ

2014.05.16

渡水復渡水

看花還看花

春風江上路

不覚到君家

 

一三三六年生まれの高啓(こうけい)の「胡隠君(こいんくん)を尋ぬ」。胡は姓。名は不詳。隠君は隠者。

 

■読みと解釈

渡水復渡水

水を渡り復(ま)た水を渡る

[何度も何度も水を渡る]

 

看花還看花

花を看(み)還(ま)た花を看る

[何度も何度も花を見る]

 

春風江上路

春風江上(こうじょう)の路(みち)

[春の風が吹く川辺の路を歩きながら]

 

不覚到君家

覚(おぼ)えず君が家に到(いた)る

[気づかぬうちに胡隠君の家に着いた]

 

 

■注目点

題材の取り合わせに注目。

隠者の胡某を尋ねる。それを詠む題材は水と花。花は春だから桃だろう。水と桃と隠者。この取り合わせに注目。

一句目は水と渡るの反復。水を渡るのは二度だけではない。五度も十度も渡る。花を見るのも二度だけではない。五度も十度も見る。歩く距離は短くはない。長い長い距離を歩く。水は川上から川下へ、ゆっくりゆっくり流れている。

季節は春。水は清く爽やか。風は麗らか。歩いている作者の気分も、清くて爽やか、麗らか。いつの間にか隠者の胡某の家に着いた。

水と桃と隠者と言えば、桃の花咲く川を上り切ると、そこは別天地。桃源郷を思い出す。桃源郷にいるのは俗人ではなく、隠者らしい人たちです。

 

《PN・帰鳥》