山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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胡笳の曲

2016.09.02

城南虜已合

一夜幾重囲

自有金笳引

能令出塞飛

聴臨関月苦

清入海風微

三奏高楼暁

胡人掩涙帰

 

六九八年生まれの王昌齢(おうしょうれい)の「胡笳(こか)の曲」。胡笳は北方異民族胡人の笛。

 

■読みと解釈

城南虜已合

城南に虜(りょ)は已(すで)に合し

[街中の南には異民族の胡人が集合を終え]

 

一夜幾重囲

一夜にして幾重(いくえ)にか囲めり

[一晩の内に何重にも取り囲んでいる]

 

自有金笳引

自(みずか)らには金笳(きんか)の引く有りて

[自分らには金属製の笛を吹く者がいて]

 

能令出塞飛

能(よ)く出塞(しゅっさい)をして飛ばしむ

[出塞の曲を飛ばさせることができる]

 

聴臨関月苦

聴けば関月(かんげつ)に臨みて苦しく

[関所にかかる月に向かい聴いていると苦しくなり]

 

清入海風微

清(す)めば海風に入りて微なり

[澄んだ調べは海からの風に乗り遠く微かに伝わる]

 

三奏高楼暁

三たび高楼(こうろう)の暁に奏すれば

[明け方の高殿に昇り三度この曲を奏すると]

 

胡人掩涙帰

胡人は涙を掩(おお)いて帰る

[異民族の胡人は涙を隠して北方へ帰る]

 

 

■注目点

胡人の動きに注目。

胡人は北方にいる異民族。その異民族が北方を離れ、漢民族の街中を占領する。一晩の内に街中は包囲される。

包囲された街中の漢民族は陥落を恐れる。

陥落を避ける策。それは胡人の古里の笛を、漢民族が吹き、胡人に聴かせる策。聴かせることで、胡人を動揺させる策。

笛の曲名は出塞。出塞は塞(とりで)を出る意で、国境を出て他国と戦うこと。国境を出て戦っているのは胡人。つまり出塞の曲は胡人に古里を思い出させる曲。その曲を聴く胡人は苦しくなり、その曲は古里の北方にも響き渡る。

明け方に何度も聴く出塞の曲。胡人は古里を思い出し、流れる涙を隠し、街中を離れ古里へ帰る。策は功を奏する。

 

《PN・帰鳥》