山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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総持閣に登る

2016.08.26

高閣逼諸天

登臨近日辺

晴開万井樹

愁看五陵烟

檻外低秦嶺

窓中小渭川

早知清浄理

常願奉金仙

 

七七〇年に没した岑参(しんじん)の「総持閣(そうじかく)に登る」。総持閣は首都長安の南西にある大総持寺の高殿。

 

■読みと解釈

高閣逼諸天

高閣(こうかく)は諸天に逼(せま)り

[高殿は上を見ると高く聳えて天に迫り]

 

登臨近日辺

登臨(とうりん)すれば日辺(じっぺん)に近し

[下を見ると太陽のある辺りに近い]

 

晴開万井樹

晴れて開くは万井(ばんせい)の樹

[晴れて伸び伸びするのは一万戸の街の樹木]

 

愁看五陵烟

愁えて看るは五陵(ごりょう)の烟(かすみ)

[愁えて看るのは五人の帝王の御陵の霞]

 

檻外低秦嶺

檻(てすり)の外には秦嶺(しんれい)低(た)れ

[手摺りの向こうには秦嶺が低く見え]

 

窓中小渭川

窓の中には渭川(いせん)小さし

[窓の枠には渭川が小さく見える]

 

早知清浄理

早(つと)に清浄(しょうじょう)の理を知らば

[とっくに信心成仏の道理を知っていたら]

 

常願奉金仙

常に金仙(きんせん)に奉ずるを願いしならん

[常々仏に仕えることを願っていたろうに]

 

 

■注目点

寺院の高殿に登った作者の心境に注目。

作者が登った大総持寺の高殿からは、長安、五陵、秦嶺、渭川が見渡せる。

長安は時の首都。一万戸の大都会。晴天には樹木が伸び伸び。一望千里の景。

五陵は漢代の五人の帝王の墓。愁いなくして見ることはできぬ。諸行無常の景。

秦嶺は別名は終南山。海抜二千メートル。渭川は別名は清渭。清浄な川。俗事離脱の景。

仏道を想像させる長安、五陵、秦嶺、渭川。

高殿から見たこれらの景。作者は後悔する。なぜ早くこの景を見なかったかと。早く見ていれば、仏道に帰依することができたのにと。

諸天、清浄、金仙も仏教語。唐の人々。仏教への関心は強靭である。

 

《PN・帰鳥》