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第421回

2018.11.23

毛利家180921半5写真は、毛利元就の自筆書状です。前半部分が欠けているため、宛先がはっきりとしませんが、内容から、老臣志道広良(しじひろよし)に宛てたものだとされています。

 

内容は、家督を譲った隆元を補佐する奉行人について、譜代奉行人の無能ぶりを嘆くとともに、元就が自ら鍛え上げた側近の児玉就忠を隆元の奉行に加えることで、政務を公正に行うとともに、元就との連絡も円滑にすることができる、と相談したものです。

 

相談ついでに、隆元の政務ぶりについても、苦言を呈しています。隆元は正直すぎること、今何が必要か、何を急がなくてはならないかの判断に乏しい、元就への孝行や仏神への信心は見事だが、もっと武略・計略・調略に心を砕かなくてはならない、と述べているのです。

 

写真の部分をよくみると、この苦言の部分、特に判断に関する批判については「いつれの事ハ」と、四行にわたって、韻を踏むかのように記されていることがわかります。

 

元就は、隆元らの子どもや、広良のように親しい家臣には、意を確実に伝えるため、長い手紙を書くことがよくありました。長い手紙といえば、約三メートルにわたって兄弟の協力の必要性を訴えた、いわゆる「三子教訓状」が著名ですが、写真の書状も、一部欠けているものの、二メートル近くある、かなり長いものです。

 

元就自身は、こうした手紙を、思いのまま書き綴ったとか、急いで書いたため書き間違いもあるかもしれないなどと弁解することが多いのですが、その割には、誤字や脱字は少ないように思われます。それどころか、写真のように、明らかに読み手を意識して、視覚的にも効果的な文章がまま見られます。これは偶然できあがったものとは考えがたく、何度か下書きして、入念に準備してから書き上げたに相違ありません。元就は、ここぞという手紙は自筆でしたためますが、それはこうした細かな工夫が、右筆の手では難しかったからかもしれません。