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第219回

2014.11.28

nt毛利家1128鯉図 これは、写生画の大家円山応挙が描いた鯉の絵です。まっすぐ降り注ぐ流れをものともせず、一直線に滝を登る鯉を描いたものです。

 

この掛け軸は、三幅対のうち、中尊をなすもので、左右の幅には、苔むした岩と、穏やかに透き通った水面を、悠々と泳ぐ鯉が描かれています。

 

応挙は、鯉の絵を得意としたといいます。確かに、わりとよくこの構図を用いたらしく、同じ構図の鯉の滝登りの絵が、但馬(兵庫県)の大乗寺と、京都国立博物館にも残されているようです。写真等で比較する限りでは、岩や水面の描き方など、毛利家伝来のものの方が、完成度が高く、一見の価値ありです。

 

さてこの「鯉図」、毛利家伝来であることは確かですが、毛利家の有に帰したのは、長い毛利家の歴史の中では、比較的最近のことなのです。

 

箱に収められている書付によると、この「鯉図」は、公爵毛利家の防府本邸、すなわち現在の旧毛利家本邸(毛利博物館)の新築を祝い、同邸宅が完成した大正五年(一九一六)に献上されたものだとわかります。もともとは、上方のさる藩の有力者が所有していたもので、それを買い取った人物が、毛利家に献上したらしく、出所は確かなもののようです。

 

この幅に賛を記した伏原宣条(ふせはらのぶえだ)は、中級の公家ですから、やはりこの絵は、しかるべき人物が、応挙に注文して描かせた、それなりの品だったと思われます。

 

この時期に毛利家に献上されたものでも、最も出来が良いものだったのでしょう。この「鯉図」は、竣成記念として関係者へ配られたアルバムの中でも、広間の飾りに用いられています。

 

毛利家の伝来品には、さまざまな経歴をもつものがあります。それぞれの品にはそれぞれ、毛利家の歴史が深く刻み込まれているのです。