山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

お問い合わせはこちら

第183回

2014.03.14

a毛利140314(源氏物語絵巻・絵合わせ)183 写真は、「源氏物語」を、全五十四帖の場面ごとに絵と詞書(ことばがき)で抄訳した「源氏物語絵巻」です。

 

描いた絵師などは、まだよくわかっていませんが、その画風から、日本の伝統的な画法である大和絵の絵師ではなく、狩野派など漢画系の絵師によるものだと明らかにされています。私たちが日頃「源氏」という言葉から想像する柔らかな絵柄とやや異なり、なんだか硬い感じがするのはそのせいかもしれません。

 

詞書は、奥書の署名から、江戸時代初期の能書家として知られている青蓮院尊純法親王だとわかります。絵柄の年代観とも矛盾しないそうですから、この「源氏物語絵巻」は江戸時代の初め頃、漢画系の絵師によって描かれた貴重な作品例だと断定してよさそうです。

 

付属する覚書によると、もとは天英院、すなわち六代将軍徳川家宣夫人の遺品であったようです。徳川家の絵巻が、なぜ毛利家に存在するかは、よくわかっていません。江戸時代に、こうした絵巻が作られるのは、たいていの場合、婚礼道具としてでした。婚礼道具において、厨子棚(ずしだな)・黒棚・書棚は三棚と称され、道具の中核をなしていました。三棚飾には、巻物を添えることが決まりだったようです。また、こうした巻物は、古ければ古いほど、女性を送り出す家の格の高さを示すと考えられていたのでしょうか、新しく作られたものよりは、古い、いわば相伝の名品が好まれたようです。

 

こうした要素を加味して、あえて大胆に想像すれば、この絵巻が作られてより幾星霜を経て、古物と認識されるようになった江戸後期、将軍家たる徳川家の格の高さを、大名毛利家に誇示するため、毛利家に嫁ぎ行く姫の婚礼道具に添えられた絵巻ではと考えられるのです。また、それを誉れと感じた毛利家によって、現在まで大切に保存されてきたのでしょう。