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第120回

2012.12.07

121207_mouri毛利氏庭園の紅葉も終わりを迎えました。紅葉と並び、秋の風物詩となっている毛利博物館の特別展「国宝」も程なく終幕です。この特別展では、国宝の品々に話題が集中しがちですが、国宝ではないものの、「さすがは毛利家!」と呼ぶに相応しい逸品をいくつも展示しています。

 

この写真もその一つ、総漆塗りの荘棚(かざりだな)です。天板と地板の上が平滑にされ、物を置くとともに、天板の下部に設えられた戸棚にも、物を入れることができるようになっています。茶道でもよく使われますから、お馴染みの方もいらっしゃることでしょう。

 

この荘棚は、随所に毛利家の家紋「沢瀉(おもだか)」が描かれていますので、毛利家のゆかりの婚礼道具に間違いないようですが、詳しいことはまだ解っていません。何時かに毛利家の手を離れ、長らく萩焼窯元の三輪家がお持ちでしたが、先年、三輪壽雪氏のご厚意により、当毛利博物館に里帰りした逸品です。

 

全体に漆を黒々と塗り、その上から太さの異なる数本の直線を、幾重にも斜交するように金銀の蒔絵で描いた三重襷(みえだすき)文様を地文様としています。斜線で区切られた菱形の内には、それぞれ金銀の配合を違えた色違いの漆で、槌車を描いています。この槌は、昔話でもお馴染みの打ち出の小槌ですから、とても目出度い、婚礼道具に相応しい文様だといえます。

 

戸袋の引き戸には、これまた金銀を高く盛り上げた、高蒔絵(たかまきえ)の技法で、藤の花が描かれています。藤はその美しさもさることながら、よく伸びることから、一族繁栄をイメージする吉祥文様として知られ、婚礼道具によく用いられる、とてもめでたい文様なのです。

 

三輪家では、この荘棚を大切にされ、正月以外に飾ることはなさらなかったそうです。まさに、一年に一度のめでたい場面にこそ相応しい逸品であるとお考えだったのでしょう。さて、特別展「国宝」のあとは、私たちもそろそろ正月に向けて動き出さなくてはなりません。