山口県のフリーペーパー「地域情報新聞 ほっぷ」WEB版

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第108回

2012.09.14

120914_mouriさて、この写真は、どこを写したものでしょう? 旧毛利家本邸(毛利邸)についてよくご存じの方には、たやすい質問だと思います。そう、毛利邸の正面本門です。

 

やや違和感があるのは、庭園が国の名勝に指定された平成八年(一九九六)以降、本門廻りの景観整備のため、周囲に生け垣を巡らせ、門前の舗装を新しくしたためでしょう。この写真は、毛利邸が完成した大正五年(一九一六)直後のものですが、本門そのもの、左右両袖の石垣・塀そのものは、驚くほど創建当初と変わっていないことがわかります。

 

毛利邸の顔ともいえる本門は、市内あるいは山口県下の方々から、「毛利さまの御門」として親しまれ、それ故に、何気なくくぐっている方がほとんどだと思います。しかし、この門こそ、今回重要文化財に指定された「旧毛利家本邸」の重要な構成要素なのです。

 

この門、外見は薬医門と呼ばれる、伝統的な江戸時代以来の形式をふまえています。巨大な屋根を支える柱や梁の太さといい、中央両開きの中扉や、両脇の脇扉の欅材も、とても普通の家では手に入らないような巨大な厚板で、さすが旧長州藩主邸宅といった風格を示しています。

 

しかし設計図面によると、この柱、実は厚さ二寸五分(約七・五p)の欅板を貼り合わせたもので、中空部分にはコンクリートが流し込まれているのです。両袖の塀も、よく眺めてみるとコンクリート製です。石垣もまた、石の裏側に補強のためコンクリートが大量に流し込まれています。また石垣は、その荷重を支え、自重で崩れたりしないよう、塀そのものの高さよりはるか地中深く掘りこまれ、塀の高さとほぼ同じ九尺(二・七m)程の深さまでコンクリートを流し込み、風雨や地震に対して、塀が倒壊しないよう施工しているのです。

 

一見すると、江戸時代以来の伝統的な建築に見えるこの建物、その実は当時最新の建材であるコンクリートをふんだんに用いた、最新の近代建築物として、非常に興味深いのです。