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第087回

2012.04.13

桜の花が舞い散る季節になると、当毛利博物館では、一足早く恒例の企画展「端午」が始まります。この企画展は、毎回異なる毛利家伝来の少年用の甲冑を中央に据えた、近代に作られた「端午飾り」を、メインの飾りとするものです。
nt毛利家150508端午飾り 今年展示するのは、よろいを綴る糸が、すべて桜色の「桜糸威小具足(さくらいとおどしのこぐそく)」です。この甲冑は、全体が淡い紅の糸である桜色の糸を用いているため、いかにも貴公子の初陣を飾るにふさわしい上品さが特徴です。兜には龍の前立てが、胸板など塗漆が露出しているところには、金の蒔絵で毛利家の家紋「沢瀉(おもだか)」が描かれ、この甲冑の持ち主が、毛利家の御曹司であることを明確に語っています。

 

さて、この甲冑、腕を保護する袖が、大袖といい、見栄えを重視して、近世初頭のものよりも大型化していることなどから、従来江戸時代後期のものだと漠然と考えられていました。数年前に修理したところ、兜の鉢裏に「根尾正信」という作者の銘文が記されていることがわかりました。鉢裏には通常、頭を保護するため、衣が貼られていますが、兜鉢の錆落としのため、この衣をはずしたところ、作者銘が現れたのです。

 

修理を監修していただいた山岸素夫氏によると、根尾正信という人物は、享保期に活躍した甲冑師だそうですから、この甲冑も、十八世紀前半に作られたことがはっきりしたのです。

 

当館所蔵の文化財のうちには、数百年の時日を経て、傷みがひどくなっているものも多くあります。それらは限られた予算の中から、修理費を捻出しつつ、修理しています。修理することにより、劣化をとりあえずくい止めるだけでなく、このように新しい事実が明らかになることもあるのです。ご来館の皆様からいただく入館料は、こうした活動を支える貴重な財源です。ぜひこれからも、当館の活動にご支援をくださいますようお願い申し上げます。