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第080回

2012.02.24

120224_mouriさて、毛利博物館には約四千点の美術工芸品があります。今回の企画展「お雛さま」では、メインとなるお雛さまが、公爵毛利元昭の夫人毛利美佐子所用の「古今雛(こきんびな)」であることから、毛利美佐子所用の人形や人形衣装などをあわせて展示しています。

 

署名のある古文書とか、裏書のある典籍とは異なり、美術工芸品そのものに、所用者の名前が書き込まれていることはほとんどありません。ではなぜ持ち主がわかるのでしょう。

 

前回紹介したように、個人特有の紋章がある場合は、持ち主を特定できる場合があります。しかし、ほとんどの工芸品に紋章は描かれていません。また、毛利美佐子のように、個人の紋章が判明している事例はむしろ例外で、ほとんどの場合、個人紋の記録は残されていません。

 

そこで、私たちが重視するのが、納箱なのです。箱には、外部から見てもすぐにどういうものかわかるよう、品名が書かれていることがあります。加えて、持ち主を特定するため、注意書などが記されていることもあるのです。ただ、「美佐子様」などと、はっきりと名前が書かれている場合は、あまり疑いようもないのですが、「奥様」などと記されている場合は、どの奥方か、慎重に特定する必要があります。

 

また当時は、下々の者が、公爵家の人々の名前を直接記すことに抵抗があったのか、実名ではなく、むしろ「御印(おしるし)」とよばれる符号のようなもので記されることの方が多くありました。毛利美佐子の場合、「亀印様」とよばれていたようです。したがって、箱に「亀印」と書かれていれば、まずはこの人の持ち物と考えられるのです。ただ、御印については、まだよくわからないことも多く、「亀印」イコール「毛利美佐子」と単純に理解してよいかすら、まだ論証されているわけではありません。そのため、箱書に御印があるとはいっても、これで持ち主が確定かといえば、必ずしもそうとは言い切れないところが悩みの種です。