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第078回

2012.02.10

120210_mouriこれは、雛道具といい、お雛さま用の婚礼道具です。実物の婚礼道具を正確に模したとされ、箪笥(たんす)や長持(ながもち)など、衣装や小物を収納する道具をはじめ、膳などの食器、筆や墨などの文房具、化粧道具などの日用品、将棋や囲碁などの遊戯具まで、ありとあらゆるものが細かなサイズで再現されています。よく見ると、金具や蒔絵(まきえ)と呼ばれる漆塗りの技法まで実物そっくりに再現され、その細かさにため息が出るほどです。

 

今回の企画展「お雛さま」で展示している雛道具は、残念ながら持ち主が判っていません。婚礼道具の場合、婚約が整ってから作り始める場合、結婚する両家の家紋を描き込むのが通例とされていますから、家紋を見れば、その所用者が判ることがあります。しかし、この雛道具の場合、家紋はいずれも毛利家の家紋「沢瀉(おもだか)」です。

 

実際の婚礼道具とは異なり、雛道具はあくまでも玩具の一種ですから、必ずしも婚約が整ってから作り始めるとは限りません。また、玩具故、嫁いだ後に作ることもあり得ますので、毛利家の家紋しか入っていないこともあり得ます。そのため、現段階では、雛道具の外観から雛道具の所用者を確定することはできないのです。

 

ただ、この雛道具を納めている納箱の様子からすると、おそらく江戸時代後期、それも幕末に近いころの雛道具だろうとは考えられています。この時期の毛利家の当主、毛利敬親とその子元徳の正室は、いずれも毛利家の出身です。どちらも複雑な政治情勢のなか、婚約が取り決められたことはよく知られていますが、その詳細はあまりよく分かっていません。

 

この両者であれば、婚礼道具を模したとしても、そのいずれもが毛利家の家紋であっても不思議はありません。雛道具特有の難しさに加え、こうした複雑な事情が、この雛道具の所用者の特定を、さらに困難なものにしているのです。