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第034回

2011.04.01

毛利家110401企画展「お雛さま」の会期もあとわずかとなりました。毛利博物館の企画展では、大名の生活をご理解いただくために、雛人形や雛道具とともに、当時の大名家の衣裳や調度類もあわせて展示しています。写真はその一つ、香棚です。

 

この香棚は、香道具一式が一つの棚に収められるようになったものです。調度としても用いられたのか、少し小さめの棚として作られていますが、総体に金や銀をふんだんに用いた、一見するだけでも豪華な品です。天板には「源氏物語」の一場面が金銀の蒔絵で描かれ、すべての引き出しを収納すると、側面全体で山水の文様が完成するようにもなっています。江戸時代によく見られる、ちょっとしたからくりのようなもので、江戸時代の人たちの心意気というか、洒落っ気のようなものがよく伝わってきます。

 

さて、この香棚に見られるように、大名家の道具には、よく「源氏物語」がモチーフとして描かれています。実は、雛人形が「お内裏さま」と呼ばれたり、公家の正装である束帯や十二単を着ているのも、公家文化へのあこがれ、より直接的には「源氏物語」の世界へのあこがれが根底にあると考えられています。大名家の子女にとって「源氏物語」は、生活のすべてにしみこんだ、文字どおり基礎中の基礎的な教養だったのです。

 

こうした傾向は、江戸時代の泰平の世だからというわけではないようです。毛利元就も、家臣から「源氏物語」と思われる書籍を借用したことが知られています。また、大内氏家臣のうちには、京都のしかるべき公家から、「源氏物語」の写本を入手した者も多かったようです。戦乱に明け暮れる武将と「源氏物語」、ありえない組み合わせのようにも思われますが、それほど「源氏物語」が日本の文化に深く根付いていたということなのでしょう。

 

この機会に、みなさんも毛利博物館で日本の古典文化に触れてはいかがでしょう。