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第015回

2010.11.12

毛利家101112当毛利博物館では、十一月三十日(火)まで恒例の特別展「国宝」を開催しています。今回もそのうちから一点、毛利家の歴史にかかわるものを紹介します。

 

今回は「色々威腹巻(いろいろおどしはらまき)」です。「腹巻」とは、背の部分を緒で結んで装着するよろいの一種で、南北朝~室町時代に流行しました。「威(おどし)」とは、「板札(いたざね)」という、鉄や革製の細長い板を、紐で結んでよろいの形にすることです。この時にきれいな色糸を用いますが、三色以上の糸を用いると「色々威」と呼ぶようです。

 

このよろいは、毛利元就所用として、重要文化財に指定されています。出来映えの見事さや、全体の形状、金具の打ち方などから、元就壮年時代の様式に間違いないとされています。しかもこれは、研究者によれば、製作当初の部品が、そのまま残されている、全国的に唯一の作例といわれています。毛利家ではこれを、家宝としてよほど大切に保管してきたのでしょう。

 

ただ一つ不思議なことに、元就のよろいは残されていますが、子の隆元や、孫の輝元所用のよろいは、拝領品以外残されていないのです。のちの歴代のうちにも、所用のよろいのない場合がよくあります。ふつう、時代が新しくなればなるほど、遺品は増えるのが常識ですが、毛利家の場合、他の当主に較べ、元就の遺品が目立って多く残されているのです。

 

実は、家を発展させた、実質的な初代とされる当主の遺品が多く残されているのは、徳川・前田家をはじめ、どの大名家にも共通しています。それはどうも、二・三代目が、急成長した家を守り固めるため、カリスマ的な初代の威光にあやかろうと、意図的に初代の遺品を大切に保管したためだと思われます。元就の場合も、おそらくそうでないかと思われます。

 

なかには遺品が少なく、後世捏造される場合もあるようですが、このよろいは伝承といい、様式といい、元就の遺品にまちがいありません。ぜひこの機会にじっくりご覧ください。