秋の詞
2010.11.12
自古逢秋悲寂寥
我言秋日勝春朝
晴空一鶴排雲上
便引詩情到碧空
作者は七七二年生まれの劉禹錫(りゅううしゃく)。詩の題は「秋の詞」。意味は秋の歌。
■ 読みと解釈
自古逢秋悲寂寥
古より秋に逢(あ)えば寂寥(せきりょう)を悲しむも
[昔から秋になると寂しさを悲しむが]
我言秋日勝春朝
我は言わん秋日は春朝より勝(まさ)ると
[私は言いたい秋の日は春の朝より勝っていると]
晴空一鶴排雲上
晴空の一鶴(いっかく)は雲を排(はい)して上る
[晴れた空の一羽の鶴が雲を押しのけて上ってゆく]
便引詩情到碧空
便(すなわ)ち詩情を引き碧空(へきくう)に到る
[(その姿は)たちまちわが詩情(しごころ)を引っぱり(私も)青空に到るのだ]
■ 注目点
注目点は二つ。一つは、秋は寂しくない。二つは、秋の風物と一体となる。
秋は寂しい。これは昔からの通念。作者はこれを否定し、秋は寂しくない。春の朝より勝っている。そう主張します。
秋晴れの空を飛ぶ鶴。青空を押しのけて飛ぶ鶴。その鶴を見ていると、詩情が引き出され、鶴と一体となり、作者も秋晴れの青空を押しのけ、飛ぶのです。
秋は詩情を引き出す季節。決して寂しくないのです。
《PN・帰鳥》