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秋の夜に独り坐す

2016.12.09

独坐悲双鬢

空堂欲二更

雨中山果落

灯下草虫鳴

白髪終難変

黄金不可成

欲知除老病

惟有学無生

 

六九九年生まれの王維の「秋の夜に独り坐す」。

 

■読みと解釈

独坐悲双鬢

独り坐して双鬢(そうびん)を悲しみ

[独りで座っていると左右の白い鬢が悲しくなり]

 

空堂欲二更

空堂は二更(にこう)ならんと欲す

[誰もいない部屋は夜中の十時になりそう]

 

雨中山果落

雨中に山果(さんか)は落ち

[降りしきる雨に打たれ山の木の実が落ち]

 

灯下草虫鳴

灯下(とうか)に草虫は鳴く

[ほの明るい灯火の辺りで螽斯が鳴いている]

 

白髪終難変

白髪は終(つい)に変じ難く

[白髪はもはや変えようがなく]

 

黄金不可成

黄金(おうごん)は成すべからず

[不老不死の薬は作ることはできない]

 

欲知除老病

老病を除くを知らんと欲せば

[老病を取り除く策が知りたいなら]

 

惟有学無生

惟(た)だ無生(むしょう)を学ぶ有り

[仏教の無生を学ぶ以外ない]

 

 

■注目点

独り坐す王維の思いに注目。

季節は秋。時刻は夜。気候は雨。部屋には独り。静寂。

静寂な秋の雨降る夜。独りポツンと膝をつき、もの思う王維。

左右の耳の辺りの白い毛。老いた象徴。両手で撫でながら、悲しみを抑える。

白い毛を撫で、時は経ち、夜も更けんとする、床に就く十時。

その時、雨に混じり山の木の実の落ちる音、明かりの下で草むらの螽斯(キリギリス)の鳴く声。独りの老いた身には堪えられぬ。

白髪は変えようがない。黒くはならぬ。だが老病を取り除き、長生きしたい。ならば黄金の不老不死の長寿薬を作るほかない。そんな薬は作れるはずがない。

だが長生きしたい。ならばどうする。仏教の無生を体得する以外ない。無生とは過去現在未来、生じも滅びもしない、悠久不変の真理、至上の真理。

熱心な仏教信者の王維は、仏にすがり、山林にすがり、静寂にすがり、生涯を送る。

 

《PN・帰鳥》