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秋の夜、隠者の丘丹に届ける

2010.10.29

懐君属秋夜
散歩詠涼天
山空松子落
幽人応未眠

 

作者は韋応物(いおうぶつ)。七三七年ごろの生まれ。詩の題は「秋の夜、隠者の丘丹(きゅうたん)に届ける」。

 

■ 読みと解釈
懐君属秋夜
君を懐(おも)うは秋夜に属す
[君を思い慕うのは折しも秋の夜]

 

散歩詠涼天
散歩して涼天(りょうてん)に詠ず
[のんびり歩きながらひんやりした空のもと詩を口ずさむ]

 

山空松子落
山は空(むな)しくして松子(しょうし)落つ
[山には人影はなく松の実が落ちている]

 

幽人応未眠
幽人(ゆうじん)は応(まさ)に未だ眠らざるべし
[隠者はきっと眠らずにいるだろう]

 

 

■ 注目点
季節は秋。時刻は夜。場所は山。天は涼しい。幽人は隠者。丘丹のこと。
天が涼しい、空がひんやりしているのは、秋の夜だからです。こんな夜、作者は丘丹を懐って散歩に出る。そして詩を口ずさむ。口ずさむ詩はこの詩でしょう。
散歩先は山。山は空しい。空しいとは、人の姿がない。誰もいない。あるのは松子。松の実が一つ、二つ音をたて落ちる。松の実は長寿の食。
松の実が落ちる音を聞いていると、隠者の丘丹が懐われ、眠られない。丘丹も私を懐って眠られない。作者はそう想像するのです。

 

《PN・帰鳥》