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砂漠の中の作

2012.09.14

走馬西来欲到天
辞家見月両回円
今夜不知何処宿
平沙万里絶人煙

 

七一五年生まれの岑参(しんじん)の「砂漠の中の作」。

 

■読みと解釈
走馬西来欲到天
馬を走らせ西に来たりて天に到らんと欲す
[馬を走らせ西へやって来て天に届かんばかりだ]

 

辞家見月両回円
家を辞して月の両回(りょうかい)円(まる)くなるを見る
[家を出て月が二度円くなるのが見えた]

 

今夜不知何処宿

今夜知らず 何(いず)れの処(ところ)にか宿るを
[今夜はわからない どこに泊まったらいいのか]

 

平沙万里絶人煙
平沙(へいさ)万里人煙(じんえん)絶ゆ
[平らな砂漠には万里四方竈(かまど)の煙は全くない]

 

 

■注目点
題の「砂漠」はどんな所か。ここに注目。
砂漠は一般的な所ではない。作者はそんな所になぜいるのだろう。何をしているのだろう。
砂漠は西方にある。徒歩では行けない。馬に乗って行く。走り続ける。家を出て二か月も走り続ける。雨の日も風の日も、難儀な難儀な万里の彼方。
果てしなく広がる砂漠。寝るのは宿。だが人間の姿は皆無。家も皆無。竈から上がる炊煙も皆無。人っ子一人見えない。草木も見えない。見えるのは砂、砂、砂。
寝場所はどこにもない。一軒とてない。ここは地上ではない。天ではないか。
砂漠。そこは外敵と戦う戦場。戦場には寝場所はない。

 

《PN・帰鳥》