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盧渓にて人に別る

2019.02.01

武陵渓口駐扁舟

渓水随君向北流

行到荊門上三峡

莫将孤月対猿愁

 

六九〇年頃生まれの王昌齢(おうしょうれい)の「盧渓(ろけい)にて人に別る」。盧渓は江蘇省を流れる川。

 

■読みと解釈

武陵渓口駐扁舟

武陵(ぶりょう)の渓口(けいこう)に扁舟(へんしゅう)を駐(とど)め

[武陵渓谷の入り口に小舟を繋ぎ]

 

渓水随君向北流

渓水(けいすい)は君に随(したが)い北に向かって流る

[渓谷の水は君と共に北へ向かって流れる]

 

行到荊門上三峡

行きて荊門(けいもん)に到り三峡(さんきょう)を上(のぼ)らば

[進み進んで荊門に着き更に三峡を上れば]

 

莫将孤月対猿愁

孤月(こげつ)を将(ひき)いて猿の愁いに対すること莫(な)かれ

[孤独の月を引き連れ哀しい猿の鳴き声に向き合ってはならぬ]

 

 

■注目点

人と別れる作者の情に注目。

別れる人。それはどんな人。正体は不明。別れる所は盧渓という川。この川は長江下流域にある。

長江下流域の渓谷の入り口に、別れる人が乗る小舟を繋ぐ。小舟を浮かべる渓谷は、北の方角に向かって流れる。作者と別れる人とはどんどん離れる。

小舟はどんどん北へ向かい、荊門へ更に三峡へと進む。そこにあるのは、孤独の月と悲しい猿の鳴き声。

作者をさし置き、別れる人と共に流れ行く、無情な渓谷。景に情を託す手法。

 

《PN・帰鳥》